最近、法案に関する議論の中で、「法制局を通っているのだから問題ない」
という趣旨の発言を、メディア等で目や耳にすることがあります。
しかし、国民の皆様にはぜひ知っていただきたいことがあります。
それは、
法制局は法案の合憲性や正当性を最終的に判断する機関ではない
ということです。
今日は、国会議員として長年立法に携わってきた立場から、「法制局とは何か」、そして「なぜ国会で議論が必要なのか」について、できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。
実は「法制局」は一つではありません
まず、多くの方が誤解されていますが、「法制局」という組織は一つではありません。
代表的なものとして、
・内閣法制局
・衆議院法制局
・参議院法制局
があります。それぞれ役割が異なります。
内閣法制局とは
内閣法制局は、政府が提出する法案や政令などについて法的な助言や審査を行う機関です。
ニュースなどで「内閣法制局長官」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
政府側の法制局です。
衆議院法制局とは
一方、私が日頃お世話になっているのは衆議院法制局です。
衆議院法制局は、国会議員の立法活動を専門的に支える機関です。
議員立法を検討する際や、法律の条文や制度設計について確認する際など、専門的な助言をいただいています。
私自身も国会議員として、政策や法案について議論する際には、衆議院法制局の皆様と意見交換を行う機会が少なくありません。
しかし、ここで大切なのは、
衆議院法制局は法案を認定する機関ではない
ということです。
法案を成立させる権限もありませんし、「この法案は絶対に問題ありません」と最終判断を下す機関でもありません。
あくまでも立法活動を支える専門家集団なのです。
では、誰が判断するのでしょうか
法律を成立させるのは国会です。
そして、その法律が憲法に適合しているかどうかを最終的に判断するのは裁判所です。
日本国憲法第81条は、
「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する終審裁判所である」
と定めています。
つまり、最終的な憲法判断は法制局ではなく司法が担うのです。
だからこそ、国会議員には法案を審査し、国民に説明する責任があります。
なぜ国会審議が必要なのか
もし、「法制局を通ったから問題ない」のであれば、国会審議は必要なくなってしまいます。しかし、現実はそうではありません。
法制局の専門的な助言を受けながらも、国会議員が国民の代表として、
本当に国益にかなうのか。
憲法の理念と整合するのか。
地方自治の本旨に反しないのか。
将来に禍根を残さないのか。
そうした点について議論を重ねるのです。
議論があること自体は、民主主義において極めて健全なことです。
むしろ議論がなくなることの方が危険です。
私自身の経験から
私は衆議院議員として長年、法案審査や政策立案に携わってきました。
その中で衆議院法制局の皆様には大変お世話になってきました。
専門的な知見から助言をいただき、法律の整合性や制度設計について議論を重ねてきました。
しかし、自民党における長年の政策立案や法案審査の現場では、「法制局がそう言っているから終わり」という考え方を耳にしたことはほとんどありません。
むしろ逆です。
法制局の意見も参考にしながら、
さらに議論する。
さらに検証する。
さらに問題点を洗い出す。
そうした積み重ねが、自民党の政策形成の文化であり、長年培われてきた政治の伝統だと私は感じています。
法制局は重要なパートナーです。
しかし、国会議員の責任を代わりに負ってくれる存在ではありません。
最終的に判断し、国民に説明責任を負うのは私たち国会議員です。
今回の「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律案」、いわゆる「副首都法案」でも同じです
以前から申し上げているように、私は首都機能のバックアップそのものには賛成です。
首都直下地震や南海トラフ巨大地震、さらには安全保障上の危機を考えれば、国家機能の分散やバックアップ体制は必要だと考えています。
しかし、今回議論になっているのはそこだけではありません。
本当の論点は、
「大阪市の制度変更を誰が決めるのか」
という点です。
大阪市民なのか。
大阪府民全体なのか。
地方自治の本旨とどのように整合性を取るのか。
これは単なる政党間の対立ではありません。
地方自治の根幹に関わる重要なテーマです。
だからこそ、慎重な議論が必要なのです。
地方自治は民主主義の土台
日本国憲法第92条は次のように定めています。
「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて法律でこれを定める。」
地方自治とは単なる行政制度ではありません。
地域に暮らす住民が、自らの地域の将来を決める権利です。
私はこれこそが民主主義の土台であると考えています。
だからこそ、地方自治制度を変更する場合には、丁寧な説明と慎重な議論が求められるのです。
最後に
私は政治家として、法案に賛成か反対か以前に、国民の皆様が正しい知識を持った上で判断できる環境をつくることが大切だと考えています。
誰かを批判することが目的ではありません。
制度の仕組みを正しく理解し、その上で議論し、その上で判断する。
それこそが民主主義のあるべき姿だと思います。
法制局は日本の法治国家を支える極めて重要な存在です。
私自身も日頃から大変お世話になっています。
しかし、法制局があるから議論が不要になるわけではありません。
法制局の助言を踏まえながら、国会議員が議論し、国民の皆様が判断する。
それこそが民主主義であり、議会制政治の本質だと私は考えています。
そして私はこれからも、地方自治の本旨と住民自治を大切にしながら、国民の皆様に分かりやすい政治を目指してまいります。